
AIを悪用した詐欺という手口は、偽の広告や本物そっくりの動画・音声を使い、「本物らしさ」で人をだまそうとするものです。
AIの技術が進み、人の目や耳だけでは本物と偽物を見分けにくくなってきました。
この記事では、総務省・警察庁・国民生活センターの資料(2026年9月23日に確認)をもとに、よくある手口と身を守る方法を整理しました。
- 有名人になりすました偽の広告から、LINEの投資グループへ誘う手口が多い
- AIで作った偽の動画や音声は、見た目や声だけでは見分けにくい
- AIで作られた本物そっくりのメールにも注意が必要
- 「AIで稼げる」という副業や講座の勧誘にも気をつける
- 困ったら警察相談専用電話「#9110」や消費者ホットライン188に相談する
うさみほうさみほです。
AIは便利な道具ですが、悪い使い方をする人もいます。
手口を知っておくだけで、ぐっと身を守りやすくなりますよ。
AIを悪用した詐欺という手口が増えている背景
AIを使えば、文章や画像、音声、動画を、誰でも短い時間で作れるようになりました。
便利になった反面、その力を人をだますために使う人も出てきています。
警察庁の統計で見る被害の大きさ
警察庁によると、令和7年の特殊詐欺とSNS型投資・ロマンス詐欺という手口の被害は、あわせて43,000件、被害額は3,257.4億円でした。
| 手口の種類 | 認知件数 | 被害額 |
|---|---|---|
| 特殊詐欺という手口 | 27,832件 | 1,423.1億円 |
| SNS型投資詐欺という手口 | 9,523件 | 1,288.0億円 |
| SNS型ロマンス詐欺という手口 | 5,645件 | 546.4億円 |
特殊詐欺という手口の被害額は、統計のうえでこれまでで最も大きな額になりました。
生成AIで偽物が作りやすくなった
総務省の令和6年版情報通信白書では、生成AIの進歩で、リアルで信憑性の高い偽・誤情報を作れるようになったとしています。
実在する人が言っていないことを、本当に話しているかのような動画も、簡単に作れてしまうのが現状です。
白書は、こうした偽物への対策が「いたちごっこ」の様子になっていると指摘しています。
AIで作られた偽物「ディープフェイク」とは
AIを悪用した手口を知るうえで、まず覚えておきたい言葉が「ディープフェイク」です。
ディープフェイクの意味
情報通信白書によると、ディープフェイクは「ディープラーニング(深層学習)」と「フェイク(偽物)」を組み合わせた言葉です。
AIの技術で合成された、音声・画像・動画のことを指します。
その人が言っていないことや、していないことを、本当のように見せられるのが特徴です。
日本でも偽の動画が広まった
白書では、生成AIで作られた岸田総理大臣の偽の動画が、SNS上で広まった例が紹介されています。
2024年1月の能登半島地震のときには、東日本大震災の津波の映像などを、能登半島地震と結びつけた投稿が多く広まりました。
有名な人の姿や声でも、偽物の可能性があると知っておくことが、身を守る第一歩です。
AIを悪用した手口①有名人になりすました偽の広告
いま特に多いのが、有名人の名前や写真を勝手に使った偽の広告です。
広告からLINEの投資グループへ誘う流れ
警察庁によると、SNS型投資詐欺という手口で、最初の接触は「バナー等広告」がいちばん多くなっています。
広告で接触したあと、LINEに誘導される割合は約9割にのぼります。
- SNSで、有名人が投資をすすめているような広告を見る
- 広告のボタンから、LINEの「投資グループ」に誘われる
- グループの中で、もうかった話や投資の方法を教えられる
- 指定された口座への振り込みや、暗号資産の送金を求められる
令和7年7月以降に被害が増えた
警察庁は、令和7年7月以降、有名人の画像や動画を無断で使ったバナー等の広告による被害の増加が目立つとしています。
SNS型投資詐欺という手口で、年代別にいちばん多いのは50代です。
生成AIでさらに巧妙に
総務省は、2024年6月に、有名人などになりすました「偽広告」への対策を、SNSを運営する大きな会社に求めました。
その中で、生成AI技術の発展などに伴って、複雑化・巧妙化するおそれがあると指摘しています。
有名人が「必ずもうかる」とすすめる広告は、まず偽物だと考えて、ボタンを押さないのが安全です。
AIを悪用した手口②本物そっくりの偽の動画や音声
AIを使うと、実在する人が話しているような動画や、声まで似せた音声も作れます。
海外では偽の音声で電話をかけた例も
情報通信白書では、アメリカの大統領選挙の予備選挙の前に、偽の音声でバイデン大統領になりすました電話がかけられた例が紹介されています。
声が似ているだけで、本人と信じてしまう人がいるのは、とても怖いことです。
声や顔だけで本人と決めつけない
家族や知り合いの声でお金の話が来たら、いったん電話を切ることが大切です。
そのうえで、自分が知っている番号にかけ直して、本人かどうか確かめましょう。
- お金の話が出たら、いったん電話を切る
- 自分が知っている番号にかけ直す
- 家族で「合言葉」を決めておく
- ひとりで決めず、家族や警察に相談する
警察庁の統計では、特殊詐欺という手口の被害額は70代がいちばん多く、次いで60代でした。
60代以上は、固定電話での被害が多いという特徴もあります。
AIを悪用した手口③本物そっくりのメールやメッセージ
AIは、自然な日本語の文章を書くのも得意です。
偽メールは大きく増えた
情報通信白書では、ChatGPTと同じ種類のAIが悪用され、フィッシング詐欺という手口のメールが大量に作られていると紹介しています。
ChatGPTの公開から12か月で、フィッシングメールが1,265%増えたという見積もりも紹介されています。
日本語が自然でも安心しない
以前は、日本語がおかしいメールで偽物と気づけることもありました。
いまは、AIで自然な文章が作れるため、文章の上手さだけでは見分けられないと考えておきましょう。
メールやSMSのリンクは押さず、銀行や通販サイトの公式アプリや、ブックマークから確かめるのが安全です。
AIを悪用した手口④「AIで稼げる」副業や講座の勧誘
「AIを使えば簡単に稼げる」という話にも、注意が必要です。
ビジネス講座の相談は5年で約3倍
国民生活センターによると、AI講座などのビジネス講座に関する相談は、2020年度の1,169件から、2025年度には3,551件に増えました。
Web会議での勧誘では、平均の契約額が87万円と高くなっています。
よくある勧誘の流れ
国民生活センターの資料では、50歳代の女性が、SNSの広告から副業のスクールに誘われた例が紹介されています。
Web会議のセミナーで「5万円くらいは簡単に稼げる」と言われ、約20万円をカードで払ったという相談です。
「すぐに元が取れる」と言われても、その場で契約しないことが大切です。
「AI 副業」の勧誘についてさらに詳しく知りたい方は、国民生活センターの「ビジネス講座のトラブルにご注意」という資料も読んでみてください。
AIを悪用した手口⑤SNSで近づいて信頼させるやり方
SNSで親しくなってからお金の話を持ち出す手口もあります。
ロマンスをよそおった手口
警察庁によると、SNS型ロマンス詐欺という手口は、令和7年に5,645件、被害額は546.4億円でした。
40代から60代の被害が全体の75.6%を占めています。
最初の接触は、ダイレクトメッセージが92.8%と大半です。
会ったことのない人は疑う
SNSやマッチングアプリで知り合い、一度も会ったことがない相手から投資やお金の話が出たら、その時点で距離を置きましょう。
写真やプロフィールも、AIの技術を使えば作れてしまいます。
会ったことのない人にお金を送らないと、はっきり決めておくと迷いません。
AIを悪用した手口⑥写真を加工して脅すやり方
AIの画像を作る力は、人を脅すことにも悪用されています。
SNSの写真が悪用されることも
情報通信白書では、SNSなどで共有されたふつうの写真を、AIで不適切な内容に変えて、被害者を脅す手口が紹介されています。
アメリカの連邦捜査局(FBI)は、被害者には未成年の子どもも含まれると警告しているとのことです。
写真を載せる範囲を考える
お孫さんの写真をSNSに載せるときは、誰でも見られる設定になっていないかを確かめましょう。
公開する範囲を家族や友だちだけにしておくと、知らない人に写真を使われる心配を減らせます。
脅されたときは、相手の言うとおりにお金を払わず、すぐに警察に相談してください。
AIで作った偽物を見分けるポイント
では、AIで作られた偽物は、どう見分ければよいのでしょうか。
人の目だけで見分けるのは難しい
情報通信白書によると、OpenAIが作った判定ツールは、AIが書いた文章を正しく見分けられた割合が26%でした。
人が書いた文章を、AIが書いたと間違える割合も9%あり、OpenAIはこのツールの提供をやめています。
白書は、フェイクの情報を正確に見分けるのは難しいとしています。
見るべきは「中身」より「出どころ」
見た目では分からないからこそ、どこから来た情報なのかを確かめることが大切です。
- 有名人本人の公式アカウントや公式サイトで、同じことを言っているか
- 会社の公式サイトで、同じキャンペーンを案内しているか
- 大きなニュースなら、新聞社や放送局も同じことを伝えているか
- お金の話なら、金融庁や警察庁の注意の呼びかけに似た例がないか
ニュースは複数の出どころで確かめる
情報通信白書では、能登半島地震のときに、過去の別の災害の映像を結びつけた投稿が多く広まったと紹介されています。
災害や事件のときほど、驚くような動画がSNSで回ってきます。
すぐに信じたり広めたりせず、新聞社や放送局、自治体の発表で同じことが伝えられているかを確かめましょう。
国立情報学研究所の判定ツール
国立情報学研究所は、2021年9月に、AIで作られた偽の顔画像を自動で見分けるツール「SYNTHETIQ VISION」を開発しました。
こうした技術は研究が続いていますが、白書では精度に課題があるとされています。
だからこそ、ツールに頼りきらず、自分でも出どころを確かめる習慣を持ちましょう。
AIを悪用した手口から身を守る5つの習慣
毎日の暮らしで、少し気をつけるだけでも、被害にあう危険は下げられます。
- 「必ずもうかる」「今日だけ」という言葉が出たら、いったん止まる
- 広告やメールのリンクではなく、公式アプリやブックマークから開く
- お金の話は、ひとりで決めずに家族や窓口に相談する
- 会ったことのない人には、お金を送らない
- 電話でお金の話が出たら、いったん切って、知っている番号にかけ直す
家族で話し合っておく
家族と「こういう電話や広告があったら相談しよう」と話しておくと、いざというときに思い出しやすくなります。
合言葉を決めておくのも、声をまねた電話への備えになります。
SNSの設定を見直す
知らない人からのメッセージを受け取らない設定にしておくと、怪しい誘いが届きにくくなります。
設定の方法は、それぞれのSNSの公式ヘルプで確かめましょう。
迷ったら一晩おく
「今日だけ」「あと1時間で締め切り」と急がされるのは、考える時間を奪うためのよくあるやり方です。
本当に良い話なら、一晩おいて家族に相談してからでも間に合います。
急がされたと感じたら、それだけで立ち止まる理由になると覚えておきましょう。
公式の注意の呼びかけを見ておく
警察庁や国民生活センターは、新しい手口が増えると、ホームページで注意を呼びかけています。
ときどき目を通しておくと、似た誘いが来たときに「これは聞いたことがある」と気づけます。
AIを怖がりすぎずに使うためのポイント
AIを悪用する人がいるからといって、AIそのものを避ける必要はありません。
正しい使い方を知っておけば、AIは暮らしの便利な道具になります。
公式のアプリを使う
ChatGPTやGeminiを使うときは、提供している会社の公式アプリや公式サイトから始めましょう。
アプリを入れるときは、提供元の名前が「OpenAI」や「Google」になっているかを確かめると安心です。
個人情報は入力しない
個人情報保護委員会は、生成AIに入力した個人情報が、機械学習に使われるおそれがあると注意を呼びかけています。
住所や電話番号、口座番号、パスワードなどは、どのAIにも入力しないようにしましょう。
AIに「これは怪しい?」と聞いてみる
届いたメールやメッセージの文面をAIに見せて、怪しい点がないか聞いてみるのも一つの方法です。
ただし、AIの答えも間違うことがあるので、最後は公式の窓口で確かめることが大切になります。
分からないことは身近な人に聞く
AIの使い方で迷ったときは、家族や友だち、自治体のスマホ講座などで聞いてみるのも安心な方法です。
ネットで見つけた「使い方を教えます」という個人の誘いより、身近で顔の見える相手を頼りましょう。
50代・60代がAIを悪用した手口に狙われやすい理由
AIを悪用した手口は、若い人だけでなく、50代以上にも広く及んでいます。
投資の話に関心を持ちやすい年代
警察庁によると、SNS型投資詐欺という手口の被害は、50代がいちばん多くなっています。
老後のお金への不安から、投資に関心を持つ年代だからこそ、狙われやすいといえます。
よく使うSNSが入り口になる
警察庁の資料では、50代から60代は、Instagram、LINE、Facebookでの被害が多いとされています。
ふだん使っているSNSだからこそ、そこに出てくる広告も信じやすくなる点に注意が必要です。
被害額が大きくなりやすい
警察庁の資料では、高齢の方は、1件あたりの被害額が高額になる傾向があるとしています。
大きなお金を動かす前に、必ず誰かに相談することを、家族の決まりにしておきましょう。
AIを悪用した手口にあったときの相談先
「おかしいな」と思ったら、ひとりで抱えずに、すぐに相談しましょう。
| 相談先 | 番号 | こんなときに |
|---|---|---|
| 警察相談専用電話 | #9110 | 詐欺という手口かもしれないと感じたとき |
| 消費者ホットライン | 188 | 講座や商品の契約で困ったとき |
| 警察 | 110 | 今まさに被害にあっているとき |
早く相談するほど手を打ちやすい
振り込んでしまったあとでも、すぐに銀行や警察に連絡することが大切です。
講座などの契約では、条件を満たせばクーリング・オフができる場合もあるので、消費者ホットライン188で確かめましょう。
相談するときに用意しておくもの
相談するときは、何があったかを順番に話せるように、手元に材料をそろえておくとスムーズです。
- 見た広告やメッセージの画面の写真(スクリーンショット)
- 相手の名前、アカウント名、電話番号
- 振り込んだ日、金額、振込先の口座
- 契約した書面やメール
相手とのやりとりは、消さずに残しておきましょう。
時間がたつと記憶があいまいになるので、気づいたその日のうちにメモを残しておくと役に立ちます。
AIを正しく知ることが一番の守りになる
AIを悪用した手口から身を守るには、AIでどんなことができるのかを、正しく知っておくことも役に立ちます。
「こんなことまでできるのか」と知っていれば、偽の動画や音声にも気づきやすくなるはずです。
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セミナーで売り込まれないか心配な方は、こちらの記事も参考にしてください。


AIを悪用した手口に関するよくある質問
- AIで作った偽の動画は、見て分かりますか?
-
情報通信白書でも、フェイクの情報を正確に見分けるのは難しいとされています。
見た目で判断せず、公式のアカウントやサイトで同じことを言っているかを確かめましょう。
- 有名人が投資をすすめる広告は本物ですか?
-
警察庁は、有名人の画像や動画を無断で使った広告による被害が増えているとしています。
広告のボタンは押さず、本人の公式アカウントで確かめるのが安全です。
- 家族の声で電話がかかってきたらどうすればいいですか?
-
お金の話が出たら、いったん電話を切って、自分が知っている番号にかけ直して確かめましょう。
- 「AIで稼げる」という講座は全部あやしいのですか?
-
すべてがそうとは限りませんが、高額な契約をその場で決めるのは避けましょう。
総額と解約の条件を確かめ、迷ったら消費者ホットライン188に相談してください。
- AIを使うこと自体が危ないのですか?
-
AIそのものが危ないわけではありません。
公式のアプリを使い、個人情報を入力しないなど、基本を守れば便利に使えます。
- 孫の写真をSNSに載せても大丈夫ですか?
-
情報通信白書では、SNSの写真をAIで加工して脅す手口が紹介されています。
公開する範囲を家族や友だちだけにしておくと安心です。
- 知らない人からSNSでメッセージが来ました。
-
警察庁によると、SNS型ロマンス詐欺という手口の最初の接触は、ダイレクトメッセージが92.8%です。
知らない人のメッセージには返事をせず、お金や投資の話が出たら、すぐにやりとりをやめましょう。
- お金を振り込んでしまいました。
-
すぐに振込先の銀行と警察に連絡してください。
まとめ|AIを悪用した詐欺という手口は「出どころ」で見抜く
AIを悪用した詐欺という手口は、偽の広告、偽の動画や音声、本物そっくりのメール、副業の勧誘など、さまざまな形で近づいてきます。
見た目や声だけで本物かどうかを見分けるのは、とても難しくなっています。
- 有名人の「必ずもうかる」広告は、まず偽物と考える
- 電話でお金の話が出たら、切ってかけ直す
- メールのリンクは押さず、公式アプリから確かめる
- 会ったことのない人にお金を送らない
- 困ったら#9110や188に相談する
AIの基本を知っておきたい方は、無料のセミナーも使ってみてください。
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手口を知っていれば、あわてずに立ち止まれます。
気になることがあったら、ひとりで決めずに誰かに話してくださいね。
AIのしくみをもっと知りたい方は、こちらの記事もどうぞ。






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